子育てに“効率化”は通用しない『ネオ・ネグレクト―外注される子どもたち』を読んで考えたこと

子育てにコスパ・タイパを求めすぎていませんか?『ネオ・ネグレクトー外注される子どもたち』レビュー
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「ネオ・ネグレクト」という言葉を、聞いたことがありますか?

2025年10月に出版された矢野耕平著『ネオ・ネグレクト―外注される子どもたち』にて提唱された造語で、SNSを中心に大きな話題になっています。

保育園の長時間保育から始まり、就学後も学童・学習塾・習い事漬け。
家で親とゆっくり過ごす時間を持てない子どもたちが増えています。

掃除や洗濯など家電や家事代行サービスで「外注」できる便利な時代になりました。
私たちはいつの間にか、子育てにおける「親の役割」までも外注し始めていないでしょうか?

「課金さえすれば、子どもは育つ」
——そんな思い込みを、本書は「ネオ・ネグレクト」という衝撃的な言葉で定義しています。

この記事では本書の内容を要約しつつ、フルタイム共働き家庭の私がこの本を読んで感じた、タイパ・コスパを追求した「合理的」な育児の弊害と解決の道筋について、自戒を込めてまとめます。

ネオ・ネグレクトとは

「ネオ・ネグレクト」とは、従来の貧困や暴力による育児放棄とは全く異なるものです。

衣食住が満ち足りた生活をしていても、親が我が子を直視することを拒否したり、我が子に興味関心を抱けなかったりする状態を指します。

筆者は30年以上教育業界に身を置き、中学受験専門塾を経営してきた立場から、この問題を現場目線で描いています。

  • 学校の後は民間学童に移動して夕食まで済ます
  • 学習塾を複数掛け持ちして、各塾で出された宿題をする時間すらない
  • 水泳、サッカー、ピアノなどの習い事を、毎日スタンプラリーのようにこなす

このような家庭は学校外教育費が高く、一見「教育熱心」に見えます。
しかし実は、子育てを「アウトソーシング」もとい「丸投げ」してしまっています。

筆者は「ネオ・ネグレクト」がはびこる原因を

  • 核家族化の進行と共働き世帯の増加
  • 資本主義(特に新自由主義)的な価値観の内面化

に求めています。

核家族&共働きがデフォになった現在、子育て世帯の時間的貧困が問題視されています。

その一方で、子どもの教育・ケアを「外注」することで、時間的余裕を生み出すことを是とする風潮になっています。

また、私たちが生きている資本主義社会では、コスパ・タイパが重視され「効率化」が極限まで追求されています。

  • 自分が稼いだ金をどう遣うかは自分で決める
  • 自身が快適な生活を送るためにコスパに優れたサービスを求める
  • 最小限の労力と時間で、自身が求めるモノ・コトを獲得したい

このような「お金で解決できる」という思考が親自身に染み付いた結果、子育ての外注(アウトソーシング)に行き着き、正当化されてしまっています。

子育てはコスパ・タイパ思考と相性が悪い

本書の中で、私が最も刺さったのがこの一文でした。

子育てほど「コスパ」「タイパ」の悪いものはない。
子育てには驚くほど費用がかかる上に、わが子が自立するまで、根気よく接し、見守っていかなければならないものであり、時間が解決してくれるようなものではない。

その一例として、筆者は中学受験を挙げています。

中受界隈ではよく「課金」という言葉が用いられますが、課金したからといって必ずしも成果が得られるわけではありません。

学力向上に必要なのは、「自ら座り、自ら育つ」という自立的な学習姿勢。
そして、それを引き出すのは、親の声かけと関わりだと筆者は繰り返します。

親が我が子の課題に向き合い、共に悩み抜くことを通じて、子どもの能動的な学習姿勢が引き出され、成果につながっていきます。

豆腐が主食
豆腐が主食

余談ですが…実は私、小学生の頃に中学受験塾で矢野先生の授業を受けていました!
当時は「優しくて分かりやすい国語の先生」という印象でしたが…20年以上経ち、本書の裏表紙にある顔写真を見てフッと思い出し、思わぬ形で(本の中で)再会した気分になりました!!
この本は、矢野先生が現場で子どもを見続けてきたからこそ生まれた問題意識なのだと、改めて納得しました。

なぜ「外注」ではダメなのか

塾・習い事・民間学童などの外注サービスは、結局のところ「商売」です。
商売を継続するために、利益を追求しなくてはなりません。

利益度外視、コスパ・タイパにこだわらずにその子の人生に本気で向き合えるのは親と身内以外にいないという、厳しくもまっとうな結論に行き着きます。

あなたは大丈夫?ネオ・ネグレクト度チェック

ネオ・ネグレクトの当事者である親は、自分がネオ・ネグレクトをしているとは気づきにくいと筆者は指摘しています。

自身の言動を振り返ってネオ・ネグレクトを自覚するため、本書では以下のチェックリストが紹介され「ています。

  1. 仕事と家庭であれば、仕事の方が大切である
  2. 仕事を進める上で、子の存在が邪魔である
  3. 子と一緒に夕食を食べることがない
  4. 子を居酒屋によく連れて行く
  5. 子供の将来の夢や進路に興味がない
  6. 子の学力は、学校や民間教育機関が責任を持つべきである
  7. 子育てについて相談できる知り合いがいない
  8. 子が夜遅くまで外で遊んでいても気にならない
  9. 家で顔を合わせても、子との会話がほとんどない
  10. わたしは親の無関心のもとで育った

当てはまる度合いや項目数が多いほど、ネオ・ネグレクトの危険信号

「え、この項目は何が問題なの?!」と感じた方ほど、ぜひ本書を読んでほしいです。

本書を通して感じたこと

コスパ・タイパ最優先が許されるのは「家事」だけ

私自身、この本を読んで強く思ったのは、

  • 家事はコスパ・タイパを最重要視してもOK
  • 育児に効率化を追求しすぎてはいけない

という線引きの重要性です。

  • 子どもに関心を持つ
  • 日々の変化を見守る
  • その都度、声をかける

この地味な積み重ねこそが、子どもの健全な育ちにつながると感じました。

親の「心身の余裕」は必須

筆者は中学受験専門塾の経営者ですが、文章全体から透けて見えるのはこの本音です。

核家族・共働き家庭で子どもに中学受験させるのは、無理がある
親が仕事をセーブして伴走しないと成立しない

明言はされていませんが、時間と心の余裕がなければ、子どもと向き合えないというメッセージは一貫しています。

筆者の言葉で特に印象的だったのはこの一文。

12歳くらいまで、子どもにとって親は「世界」そのもの

親も人間である以上、気分や体調で子どもとうまく向き合えない時があるのは仕方ありません。

ただ、子どもに「たとえ曇りや雨の日があっても、世界はそんなに悪いものじゃないんだよ」と感じてもらうためにも、心身の余裕を意識して確保することが親の責任だと痛感しました。

そのために私自身は、子どもが小学校入学前までに働くペースを一度セーブしたいと強く感じました。

近年の公立小学校は、漢字の書き取りや計算ドリルなどの従来型の反復練習が減少していると言われています。

学習内容の増加や、議論やグループワークなどを重視するアクティブラーニングの導入などが理由に挙げられます。

学校現場も指導要領をこなすのに手一杯で、子ども一人一人に合わせた指導はできていないのが現状です。

小学校の授業について行くためには家庭学習でのフォローが不可欠です。

豆腐が主食
豆腐が主食

子どもの学習サポートやメンタルケアのため、小学校入学までに仕事をセーブする体制を整えておくのが、私の目下の課題になりました!

まとめ

「ネオ・ネグレクト」は、虐待のように分かりやすい形をとらないぶん、どんな親でも気づいたら陥っている可能性がある問題だと痛感しました。

仕事も家事も育児も全て完璧にこなそうとする中で、いつの間にか
「お金を払っているのだから大丈夫」
「プロに任せているのだから問題ない」
と、自分に言い聞かせてしまう。

しかし、本書を通して強く伝わってきたのは、子どもにとって、親の関心や声かけは代替不可能という事実です。

子育ては、コスパもタイパも最悪です。
時間もお金もかかり、成果が見えるまでには長い時間が必要です。

それでも、子どもが「自分は親に見てもらえている」「大切にされている」と感じる経験は、将来にわたって心の土台になります。

だからこそ私は、「もっと効率よく育児をこなす方法」を探すのではなく、どうすれば子どもと向き合う余白を確保できるかを考えたいと思いました。

その一つの選択肢が、働き方を見直すことです。

すべての家庭に同じ正解はありませんが、子どもにとって親が「世界」である時間は、想像以上に短い。

この本は、忙しさに流される前に一度立ち止まり、「自分はどんな関わり方をしたいのか」を考えるきっかけを与えてくれる一冊でした。

少しでも心に引っかかるものがあった方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

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